『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』プロデューサー・詩歩さんが語る、「人生が楽しくなる」絶景の力とは?

2017年02年28日

憧れのお仕事のリアルに迫る!輝く女子のワークスタイル
Vol.10 『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』プロデューサー 詩歩さん

『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』プロデューサー 詩歩さん

世界や日本各地の絶景写真を紹介し、70万人の「いいね!」を獲得したFacebookページ『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』を運営する詩歩さん。U29世代ならではのみずみずしい感性で、最近の絶景ブームをリードする詩歩さんに、仕事への想いを語っていただきました。

 

「絶景」を仕事にするということ

「絶景の仕事」というと、実際どのようなことをされているのでしょうか?

だいたい3種類の仕事がありますね。
1つ目は「作る」仕事。2013年に書籍版の『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』を出して以降、毎年1冊ペースで本を作っています。他にも、絶景のカレンダーやパズルといったグッズを制作しています。

2つ目は「タイアップ」の仕事です。企業から声をかけていただいて、絶景にまつわる企画を一緒に考えたりしています。そして3つ目は「投資」。1つ目と2つ目の仕事での収入を使って、旅行者が自分で撮った絶景写真をシェアできるウェブサイト「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」を運営しています。あとは毎月、自主的に旅に出るようにもしていますね。自分の経験値を高めて新しい仕事を提案できるようにと思って。

トレードマークのニット帽と、一眼レフカメラ。

旅に必ず持っていくのは、トレードマークのニット帽と、一眼レフカメラ。カメラは、この仕事をするようになってから本格的にはじめ、今では撮影した写真を自著に載せることも

2つ目の「タイアップ」とは、具体的にどのようなお仕事があるのでしょうか?

例えば、大手旅行会社とコラボをして、Facebookページで一番「いいね!」が多かった、イタリアのランペドゥーザ島のツアープロデュースをさせていただきました。

ランペドゥーザ島は海の透明度がとっても高くて、波のない晴れた日には、まるで船が宙に浮いているかのような絶景が見られるんです。でも、いざ行こうとしても、マイナーな場所すぎて何も情報がなくて(笑)。そこで私が現地で下見をしてきました。

ガイドブックなどない島だったので、「宙に浮いて見える船は、どこに行けば見えるんでしょうか?」と、現地の人に聞きながら、島内をあちこちへ。教えられた場所に行っても遠くてよく見えない、なんてこともありましたが、めげずに探し続けた末に、崖の上から何艘もの船が宙に浮かんでいるような景色が見えたときは、感動してただただ見入ってしまいました。

さらに、ここまで来たなら船からこの景色を見たい人もいるはず、と思って、小さな船を借りて海をまわることにしたんです。天候不順で2日間待機となり、やきもきもしましたが、出張最終日にやっと出港できて、Facebookに載せた写真と同じように、浮かんでいる船を横から見られる場所を発見! ツアーコースに組み込むことができました。
おかげで「あのFacebookの絶景を見たい!撮りたい!」と思っていらした観光客の方には、好評だったそうです。

『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』

 

新人研修で制作したFacebookページがきっかけで独立

「絶景」にはいつから興味を持っていたのでしょうか?

昔から、今で言う“歴女”(笑)で、小学生のときに『古代遺跡のひみつ』という本を読んで、空中都市・マチュピチュに思いを馳せたりしていました。大学生になってからは、バイトをして旅費を稼いでは、イタリア、エジプト、ペルーなど、世界各地を巡っていましたね。

いまや絶景の代名詞みたいになっている、ボリビアのウユニ塩湖に行ったのも、大学生のときでした。ウユニ塩湖は世界最大級の塩湖で、雨季になると湖面に水がたまって、鏡のように青空を映し出す景色が有名なんですが、私が行ったのは乾季で。雨が降らないので、鏡のような光景は見られなかったんですが、その代わり真っ白な塩原が地平線まで続く、一面白の世界が広がっていたんです。そこで見た日の出は、もう言葉にできないほどの風景で、気がついたら沈んでいく月に向かって走りだしていました(笑)。絶景というもののすごさを体感した瞬間でした。

でも、この頃は絶景の仕事をするなんて、夢にも思っていなかったです。ただただ、会社に入ったら、もうあんまり旅には行けなくなるんだろうな……と。

会社員時代の新人研修で、Facebookページを立ち上げられたとか?

新卒で入社したのはインターネット広告代理店で、丸2年勤めました。SNSの企業向けプロモーションのメニューやウェブサービスを作っていました。

その会社の新人研修で、Facebookページを作って「いいね!」の数を競うという課題が出て。そこで自分が好きな「旅」をテーマにすることにしたんです。どうしたら「いいね!」を押してもらえるかな、と考えるうちに、思いついたのが「絶景」でした。ハッとするような絶景の写真なら、人種や年齢を問わず、いろいろな人に伝わるはず、と。

もう一つ意識したのが、Facebookページのタイトルにも入っている「死ぬまでに」という言葉です。実は、私自身、本当に死にそうになったことがあるんです。大学の卒業旅行でオーストラリアに行ったとき、自動車事故に遭って、ドクターヘリで運ばれるほどの大けがを負いました。幸い命はとりとめたんですが、その頃から、「人っていつ死ぬか分からないなぁ」と考えるようになって。だからFacebookページでも、私が行ったことのある場所じゃなくて、私が「死ぬまでに行きたい!」と強く感じた場所を取り上げるようにしたんです。

このFacebookページには、詩歩さんの想いが強く反映されているのですね。

私は、ただきれいな風景というだけでは、「絶景」とは違う気がしていて。美しい景色に加えて、「ストーリー」があることが大切だと思っているんです。さまざまな気象条件が重なっていたり、壮大な歴史が秘められていたり……だからこそ、わざわざ足を運ぶ価値がある。そういう場所の写真を探すのは時間もかかるんですけど、「自分でも『いいね!』を押そうと思えるかな?」と胸に問いかけながら、妥協しないで選ぶようにしていました。

おかげで、新人研修では「いいね!」数トップを獲得。そこで終わらせてもよかったんですが、自分が「ここに行きたい!」と思って紹介した絶景を、いろいろな方に「いいね!」と言ってもらえたことが嬉しくて、個人的に続けることにしたんです。当時は仕事が忙しくて、毎日夜遅くまで仕事をしていました。それでも、真夜中や週末を使ってFacebookの更新を続けていたんです。

更新することで、たくさんの方からリアクションがあると、「ああ、生きていてよかった……」と感じるような日々でした。そのうちお話をいただいて、書籍版の『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』を出すことになったんです。

この頃に会社を辞めて独立されたそうですが、すごく勇気ある決断ですよね。

会社も仕事も好きだったんですけど、副業が禁止で。本は特例で認めてもらったものの、他の話は断らざるをえないことも多かったんです。

ただ、独立する前に会社勤めを経験したことは、すごくよかったなと思っています。契約を締結するのがどれだけ大変かや取引の流れなど、そういう知識は今、いろいろな企業と仕事するうえで確実に役立っていますね。

『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』プロデューサー 詩歩さん

「今、一番行きたいのは南極! まず、氷の大地があるということがすごいですよね。どこの国にも属していないのもおもしろいし、すべてが規格外の場所」

 

絶景を通じて、みんなの人生を楽しくしたい!

今はどんなスタイルで働いているのですか?

仕事柄、旅に出ることが多くて、1カ月のうち1週間は海外、1週間は日本の地方、残りの2週間は東京、という感じですね。東京にいるときは、日中はミーティングをしたり、取材を受けたり。あとはコワーキングスペースやカフェで、リサーチやイベントの資料作り、ウェブサイトのディレクション、さらには税務処理まで(笑)、いろいろとデスクワークもこなしています。

「旅が仕事になるなんて、うらやましい」と言われたりもしますが、出張中の一番のミッションは、その土地の絶景を見つけることや、そこのベストショットを撮影すること。だから朝5時起きで朝日の写真を撮って、夜は遅くまで星空を撮影して2時就寝……といった具合に、かなりハードなスケジュールなんです。そういった取材が終わった後に、さらにデスクワークが待っていることもあるし、移動が多いのも体力的にキツくて。つい「趣味で行ける旅行の、なんと楽しいことよ……」と人をうらやましく思ってしまうことも、あります(笑)。

でも、そうやって苦労して発信したことに反響があったり、私が紹介した場所に実際に行ってみた、という話を聞いたりすると本当に嬉しいですし、そういうときに達成感みたいなものを感じることができますね。

今後、そしてこれからの人生で、どのようなお仕事をしていきたいですか?

今までは、海外の絶景を日本に紹介する仕事が多かったんですが、日本にも、まだまだ知られていない絶景が眠っていると思うんです。以前、三重県の絶景を発掘するプロジェクトに参加したんですが、「鬼ヶ城」という洞窟の中から見た満天の星空が、本当にすばらしくて。洞窟の中に反射する波の音を聞きながら、たくさんの流れ星を鑑賞できる……そんな特別な体験ができるのに、地元の方にとっては日常的にある場所だから、気づいていなかったりするんです。

最近は、日本を訪れる外国人観光客が増えていますが、そういう方々に向けて日本の魅力的な絶景を、自分からもっと発信していきたいですね。そのために語学力を身につけたくて、去年は2カ月間、カナダに留学しました。最近はSNSで絶景を紹介する際に、英語の解説文も書いたりしています。

その先、となると、いつまでこの仕事を続けているか想像がつかないんですが(笑)。大学時代に環境について勉強していたので、地球や日本が良くなるようなことをしていきたいです。みんながわっと感動するような自然の風景を発信したら、森が守られるかもしれない。日本の知られざる魅力的な場所を発信したら、過疎の地域が減るかもしれない。そんなふうに、日本の未来を少しでも明るくする仕事ができたら、と思っています。

『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』プロデューサー 詩歩さん

最近、友達とバスケットボールをするようになったという詩歩さん。月に1~2回、練習に参加して汗を流すのが、リフレッシュの時間

 

『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』プロデューサー 詩歩さん

詩歩(Shiho)
1990年生まれ。静岡県出身。世界中の絶景を紹介するFacebookページ『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』を運営。それを書籍化した『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』シリーズは、4冊で累計55万部を突破。現在はフリーランスで活動し、旅行商品のプロデュースや企業とのタイアップなどを行っている。

Facebook https://www.facebook.com/sekainozekkei
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Official Site https://zekkei-project.com
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(インタビュー/野田りえ 構成/風来堂 撮影/氏家岳寛)

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