保育園に子どもを入園させるには?今からできる「保活」について

2017年02月22日

今からリサーチした者勝ち!な保育園事情とは?

保育園イメージ

将来、子どもを産み育てながら働き続けるには、就業中に子どもを預かってくれる保育園の存在が欠かせません。そして都市部ほど、希望の保育園に子どもを入所させるための「保活」が欠かせない状況です。いざとなってから途方にくれないように、その現状と対策を知るべく、保育・子育て事業に取り組む、認定NPO法人フローレンス・中村優子さんにお話をうかがいました。
認定NPO法人フローレンス・小規模保育事業部ディレクターの中村優子さん

認定NPO法人フローレンス・小規模保育事業部ディレクターの中村優子さんは、小学校2年生から2歳までの3人のお子さんのお母さんでもある

 

「日本死ね」発言はリアルな現状

私たち「認定NPO法人フローレンス」の設立は、当法人の代表が、子どもが病気になると預け先がなく、その欠勤を理由に母親が職を失う場合もある、という現状を知ったことがきっかけでした。2004年に病児保育事業からスタートし、小規模保育園(小規模保育所)「おうち保育園」の運営、障がい児保育、ひとり親への支援や赤ちゃん縁組事業、妊娠相談まで、子育ての問題を解決するべく、多様な活動を行っています。

保育をめぐる問題の中でも、特に急務とされているのが都市部における待機児童問題です。保育士や施設そのものの不足によって、保育園に入りたくても入れない待機児童が増え続けているのです。

2016年には、ある母親の「保育園落ちた日本死ね!!!」という衝撃的なインターネット上の投稿が話題になりましたが、待機児童問題は、以前から女性の出産後の就労を阻む大きな課題でした。いくら勤務先に産休・育休制度が整っていても、子どもを預けられなければ仕事復帰を諦めざるをえません。生活にかかる切迫した叫びが、あの発言となったのです。

 

待機児童数は都市部ほど深刻

2015年、国は、従来の「子ども・子育て支援制度」を「子ども・子育て支援新制度」として強化し、最も待機児童数の多い0~2歳の受け皿を増やすため、定員6~19人の「小規模保育園」も認可事業とするなど、待機児童問題の解決策を講じてきました。

フローレンスは2010年から厚生労働省の試験事業として、空き家を利用した定員9名の小規模保育園を江東区でスタートさせていました。現在では、都内で13園まで増えたところです。新制度により法整備も追いついたことから、同様の小規模保育園は全国に約2500園にまで拡大。これにより、大規模な園の運営に必要なスペースを確保しなければならないため認可園が都市部で新設しづらい、という問題点は改善されました。しかし、東京都はまだまだ深刻な状態が続いています。

ちなみに、2016年4月1日時点の全国の待機児童数は2万3553人、そのうち東京都は8466人でした。認証保育園や認可外保育園に入れ、高い保育料を払いながら、認可保育園の空きが出るのを待っている人、また、待機すること自体を諦めた人を指す「隠れ待機」も含めると数はもっと増えるでしょう。

もちろん都内でも差はあるのですが、特に待機児童が多い杉並区の例を見てみましょう。2017年4月入所の認可保育園(小規模保育所含む)利用申し込み状況の速報値(※)を見ると、0~5歳の場合、入園可能人数の合計が3119人であるのに対して、4205人の申し込みがありました。3歳以上は全て入園可能枠におさまっているのですが、2歳以下は、1420人があふれているんです。

その内訳で、特に1歳児だけを見ると、定員875人の枠に対して申し込みは1585人と、倍率はほぼ2倍です。産休・育休は、基本的に子どもが1歳になるまで取得できるもの。つまり、1歳児を預けることができなければ、産休・育休直後に仕事復帰ができないにも関わらず、です。

杉並区が無策かというとそういったことでは決してなく、2017年4月に向けて、定員27~120人の新規大規模園19園、小規模園や事業所内保育、家庭的保育15園を一気に開設するという大胆な対策を打ったにも関わらず、この結果です。現在認可保育園に申し込みを行っている人、「待機児童」とされている人以外にも、保育園の開設を待っている人がたくさんいるのです。

東京都も新たに、都立公園の土地を利用する、所有の土地を保育施設にする場合は、固定資産税を減免するなどの保育園を増やすための対策を行っています。しかし、希望者数に施設数がまだまだ追いついておらず、残念ながら、待機児童数が多い状況は最低でもあと3年、またはそれ以上続くと予想されます。

 

多様化する保育園の種類とは?

保育施設の種類

では、どうしたらよいのか。その対策の前に、選ぶ基準にもなる保育園の基本情報を頭に入れておくとよいと思います。保育園にはさまざまな種類がありますが、例えば東京都の場合は主に3つです。前述の認可保育園、東京都が独自で定める認証保育園、そして認可外保育園です。

まず認可保育園とは、国の基準により厚生労働省の認可を受けている保育園のことです。施設面積や保育士の配置、衛生面や保育計画などが決まっており、保護者の立場からすると安心であるというイメージが強いためニーズが高く、入所希望が殺到しがちです。

入所するには市区町村に申請して審査を受けます。審査基準はその家庭が「どのくらい保育を必要とする状況か」を判断し、市区町村ごとに基準が異なるポイント加点制になっています。保育料は収入に応じて市区町村が決めるのですが、認可保育園は後者二つに比べて保育料が安いことも、応募が多くなる理由の一つになっています。

次に、東京都独自の認証保育園とは、原則13時間以上開所、新生児から預かってくれるなど、認可保育園で提供しきれないニーズをカバーするサービスもあり、駅前型と家庭的保育型があります。

申し込みは直接、施設に行います。審査基準は各施設により異なり、保育料は認可保育園よりも高くなるのが現状です。上限は年齢によりますが7万7000円~8万円で、施設によっては行政の補助が出る場合もあります。

3つ目の認可外保育園とは、国の認可を受けない民間の施設で、ベビーホテルや企業内保育室なども含まれます。申し込みは、こちらも直接施設へ行う形で、一定の審査基準はありますが比較的ハードルが低く、空きがあればすぐに入所できるケースも多いです。また、一時保育などのニーズに対応してもらえる、特色のある教育に取り組んでいる事業者が多いといった利点もあります。

しかし、事業者ごとの基準で運営が行われているため、安全面・衛生面などの保育の質に関してはそれぞれで水準の差が大きい傾向があり、入園する前により一層しっかりと事前にチェックする必要があります。また、保育料が10~15万円と高額になりがちであることが特徴です。

認定NPO法人フローレンス・小規模保育事業部ディレクターの中村優子さん

「厚生労働省や内閣府のHPを見て、待機児童の現状や、保育施設で起こる事故などに関するデータをチェックすることも大切です」と語る中村さん

 

入所のための「保活」は情報収集戦!

人気の集まる認可保育園に入れるためには、自分が住む地域の情報を収集し分析する、入所のための保護者の活動「保活」が重要です。情報を収集することで、希望園に入所できる確率をあげ、入所できないというリスクを最低限に減らす。仕事でいうプロジェクトマネジメントが「保活」というわけです。

女性にとって結婚・妊娠・出産は完全に予定通りにいくものではありませんが、ライフプランをある程度具体的にたてて、保育園探しを行う時期の目途をつけましょう。認可保育園に入れるか入れないかは、その地域の状況によります。

独身時代と結婚後では、住む場所が変わる女性が多いことを考えると、結婚前に、パートナーと新居を構える場所について話し合ったり、子育てをする地域をより具体的に割り出したりするほうが、事前に情報も集めやすくなります。

希望の保育園の目途がたったら、または、その目途をたてるため、役所の保育園窓口へ行って状況を把握し、入所の可能性を探りましょう。また、その地域が子育て支援に積極的かどうか、市区町村の政策などもチェックするとよいでしょう。

その地域の倍率が高すぎる場合には、認証保育園や認可外保育園も視野に入れることや、倍率の低いところへ転居することも解決法の一つです。

 

「保活」のカギは方向性を定めること

入所申請の審査基準とは、家庭の基本状況や細かな事情により「保育の必要性」を加点するポイント制で、必ずしも保育園担当者が細かく教えてくれるわけではありません。申告をすることで有利になる条件や、保育園の評判なども含めて、地域の友人・知人、先輩ママ、SNSなどの情報が頼りになることもあります。1ポイントの加点差が明暗を分けるとも言われているので、より正しく新しい情報を得ることが大切です。

また申請用紙には、複数の候補園を記載します。多いところでは第10候補までを記載する自治体もあるので、上位候補がダメだった場合のことなどを、具体的にイメージしておかなければなりません。

さらに保育園選びで大切なことは、候補園に足を運ぶことです。現場の雰囲気を目で見て確かめましょう。施設がキレイで新しいかだけではなく、保育を行うスタッフの子どもへの接し方も実際に目にしてみてください。特に、園全体のマネジメントを担う園長や主任保育士の考え方や発言もよく聞いて、参考にしてみてください。ほかにも園庭の有無、駅からの距離、駐車スペースの有無などの違いもありますし、マンションタイプや空き店舗を利用した保育園など形態もさまざまです。

しかし、最も重要なことは自分の軸を持つこと。例えばのびのびと育てたいということであれば、子どもが思いっきり遊べる場所が必要ですし、少し人見知りの子なら、少人数制の園でゆっくりと人間関係を育ませてあげるなど、子どもの特性も考慮した上で、子どもにどんな風に育って欲しいか、どんな環境を与えてあげたいかという条件を挙げ、保育料もふまえて、それらに見合ったベストな保育園を選んでください。

保育園は、大切な子どもが長時間過ごす生活の場所です。子どもにとっての「より安全で快適な環境」とは何か、しっかりした方向性が決まっていれば、数多く集めた情報を整理し、どのように選んでいったらよいかが見えてきます。

保育をめぐる状況は、決して楽観できるものではありません。しかし国・自治体、そして私たちのような保育事業者が、未来の子どもたちのために懸命な努力をしていることは確かなので、徐々に改善されていく見通しです。

保育園問題も含めた子育ては、女性だけが何から何まで背負うものではありません。一人で抱え込まずに、まずは相談することも大切です。子育てを通じて地域と繋がれば、生活する視点も変化し視野も広がるはずです。U29女子の方々は、子育ては地域ぐるみの共同プロジェクトだと思って、楽しんで欲しいですね。

 

エリアによっては、引き続き保育園が足りない状況が続く、ということを前提とすると、まだ結婚・出産の予定がないから……と油断していると、いざ結婚・出産をし、子どもを預けて、仕事も続けたい!という道を選んだ時に、困ることになるかもしれません。
そうならないためにも、保育園に関する情報に敏感でいることが大切ですね。

※2017年1月20日、杉並区より発表
http://www.city.suginami.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/030/579/2904-ninnka-moushikomijyokyo-2.pdf

(取材協力・監修)認定NPO法人フローレンス 東京都千代田区飯田橋3-3-7 秋穂セントラルビル2F
(インタビュー/兼子 梨花 構成/風来堂 撮影/清水信吾)