「こうあるべき」と決める必要はない。状況に応じてお互いが柔軟に対応すればいい

2016年01月25日

結婚や出産といったライフイベントは女性にとって大きな節目となります。仕事と家庭のバランスを保つには、夫の協力が欠かせません。
そこで、先輩夫婦のうらやましすぎて震える(?)ような、結婚と仕事を両立させる理想的な関係をご紹介します。みなさんがライフプランを考える際のヒントが見つかるかもしれません。

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今回お話を伺ったのは、外資系の保険会社で広報を務める只友(ただとも)真理さんと、民間の学童保育所を経営している大介さんご夫婦。小学校2年生と2歳のお子さんがいらっしゃいます。

共働き夫婦が子育てをするにあたって必ずぶつかるのが「小1の壁」と呼ばれるもの。あまり聞き慣れない言葉ですが、子どもが小学校に上がると今までのように夜まで子どもを預けられる施設がなくなり、仕事との両立が難しくなってしまうことから、そう呼ばれています。

その壁を乗り越えるために、夫の大介さんは脱サラして、英語や算数、暗唱を含む国語の指導などを行う民間の学童を立ち上げ、真理さんは会社勤めを続けながらも夫婦二人三脚で家事や子育てを行っています。
そんな只友さんご夫婦に、育児に対する考え方や家事の協力体制、実家との付き合い方などを伺いました。

【只友さんご夫婦から学ぶ成功の秘訣】

・苦手な部分は外注サービスを利用するなど、ゆとりを持って家庭との両立をはかること
・20代のうちに仕事の楽しみを発見しておくこと
・家庭と仕事の間に良い循環を生むためには、仕事を楽しむこと

 

「小1の壁」を乗り越えた夫の学童開設。仕事も育児もうまくいくきっかけに

夫の大介さん(41歳)、妻の真理さん(36歳)

夫の大介さん(41歳)、妻の真理さん(36歳)

-会社勤めを辞めて学童をはじめるのはご夫婦にとって大きな決断だったのではないですか?

大介さん:私は必然の結果だと思っていますよ。
上の子が保育園のときは二人ともフルで働いていたので、18時半に迎えに行けたことなんて数える程度でした。奥さんも「今日は早いよ」と言っておきながら20時を過ぎることもありましたし…。

そのころから、共働き夫婦の子育てを手助けするようなサービスは絶対に必要だと思っていて。ただ、本格的に民間学童のことを考え始めたのは長女の小学校入学が迫ってきてからですね。このままでは子どもに寄り添った教育ができなくなる、と感じていました。

真理さん:結婚したとき、「夫の稼ぎだけでも生きていけるなぁ」と思い、冗談で「仕事辞めちゃおっかな」と言ったことがあるんですけど、すぐに夫から「なに言ってるの! あなたから仕事を取り上げたらなにが残るの!? あなたには仕事が必要でしょ?」と言われて(笑)。私も「だよね!」という感じで、それ以来仕事を辞める選択肢はなくなりました。

大介さん:妻が仕事をがんばりたいと思っていることは知っていたし、彼女は仕事をしているほうが生き生きとしていられるタイプなので。しかし共働きを続けるとなると受け皿になる民間の学童が必要になりますが、それをカバーしてくれる適切な場所がない。だったら自分たちでやるしかない、という自然な選択だと思っていますよ。

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-大介さんが学童を立ち上げたことで、仕事や家庭との向き合い方に変化はありましたか?

真理さん:仕事に対する真剣みが増しましたね。今までは「自分が力を発揮できるところにいると楽しいから」という理由で仕事をしていて、キャリアアップも機会があれば…くらいにしか思っていませんでした。それが夫の起業後は、一家を支えるという意識が芽生えて、着実にキャリアアップする方法を考えるようになりましたね。

その分、子育てに対する負担や心配はかなり軽減されたと思っています。保育園や学校の行事が気になって仕事に集中できなかったり、子どもが忘れ物をすると自分を責めていたりしたんです。けれど今は「子どものことは夫が見てくれているから大丈夫」と、育児に対する変な気負いがなくなり、いい意味で楽観的に考えられるようになりました。そのおかげで仕事にも身が入るようになったので、結果として両方によい影響があったと思います。

大介さん:私があまり細かいことを気にせず「忘れ物くらい大丈夫だよ」という性格なので、それが影響しているのかもしれませんね(笑)。
今では朝の見送りや旗振り当番は私が担当するのですが、逆に放課後に開催される保護者会は私が出られない時間帯なので妻が調整してくれます。

私自身も、会社を辞めたことで、仕事に対する意識は大きく変わりましたね。会社員だったころは、なんだかんだで会社という後ろ盾や上司という存在に見守られていました。いまは全ての責任は自分にあるので、その分子どもたちとも教育ともしっかり向き合っていこうと感じるようになりました。

真理さん:夫が仕事をしている時間帯のお迎えや保護者会の参加、夕食の準備などは私が担当しています。その代わりに夫は帰宅後に次女をお風呂に入れたり、食後の食器を食洗器にセットしてくれたりします。2人で協力し、お互いが動けない時間帯をカバーし合えるのは助かりますね。

自分たちに合ったサービスを活用するなど柔軟に対応すればいい

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-初めての出産や育児となると実家に頼る人も多いと思うのですが、只友さんの場合はどうでしたか?

真理さん:私の実家が遠方にあることや夫の母の体調のことも考えて、基本的には実家に頼らず、二人だけでなんとかしています。ただ、子どもが急に体調を崩してどちらも対応できないようなときだけ、夫の母にお願いしてます。「孫にも会いたいし、必要なら頼ってね」と言ってくれているので、そこは好意に甘えようかなという感じです。
ただ、基本的には私が会社を休んだり早退したりできますし、病児保育のNPOであるFlorence(フローレンス)も使えるので、夫の母に負担にならない程度にお願いするようにしています。

-只友さんは家事代行などのサービスをうまく活用されているとのことですが、ほかにはどういったものがありますか?

真理さん:私も夫も気に入っているのはスマイルウォッシュという洗濯サービスですね。袋に詰めて送るだけで、2日くらいでキレイに洗って畳まれた洗濯物が戻ってくるんですよ。

ほかにはoisix(オイシックス)も使っています。食材を配達してくれるサービスですが、中にはレシピと食材がセットになっているものもあって、手軽なのにおいしく作れてしかも失敗しないのでとても助かりますね。

-家事や育児の一部を「業者にお願いする」という行為は、少しハードルが高い気がするのですが…。

真理さん:以前はこういった話をするとかなり驚かれたのですが、最近では同僚たちや時短で働いている人の間でも、家事代行サービスを使っているという声を聞くようになりました。

「どちらか一方は家事が苦手でも、もう一方が得意」というパターンであればいいのですが、あいにく我が家は私も夫もあまり家事が得意ではないので…。
たとえば洗濯の代行サービスは、「洗濯して干すまではできる、だけど畳んでしまうのが苦手」という私たちにとってはすごく便利なものですが、人によっては必要ない場合ももちろんありますよね。

なにも「外注だけ使う」、「外注は絶対に使わない」、と決める必要はないんじゃないかなと思っていて。自分たちにとって本当に必要なサービスは活用するなどして、柔軟に対応していけばいいんじゃないかと思うんですよね。
夫も最初は家事を業者に依頼することに抵抗があるようでしたが、いまはお互い納得いく形で活用しています。

U29女子へのアドバイス「仕事を楽しむこと。それが結果として仕事と家庭に良い循環を生んでくれる」

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-では、最後にU29女子にアドバイスをお願いします。

真理さん:私が結婚・出産したのは20代のときでしたが、そのときよりも今のほうが共働きに対する理解も環境も整っていると思います。

家事の代行サービスだって、私たちが結婚したころは全然種類もなくて高額のものがメインでしたが、いまは種類も豊富で手頃な価格のものもたくさんあります。なので、そこまで共働きに対して構えなくても大丈夫だと思います。

また、20代のうちに仕事の楽しみを発見しておくことは一つのポイントですね。仕事が楽しくなってくると、成果が出るようになりますし、そうすると仕事を任せてもらえる幅が広がり、お給料アップにも繋がります。

そうやって家庭を持っても仕事を頑張っている姿を周囲に見せることで、共働きに対する理解も得られるし、応援してくれる人がでてくるんですよ。仕事も子育ても楽みながらやっていれば、良い循環が生まれる気がします。

大介さん:まずは「子育ては女性のもの」だとか「自分の親がどういう子育てをしていたか」といった固定観念を持たないことだと思います。夫婦で一緒に子育てをしているという認識で話し合っていくのが大事だと思うんです。

それから、どちらか一方の経済力が弱いと、夫婦間における発言力もどちらかが弱くなってしまうと思っています。女性も働いて夫と同じだけ稼ぐ…くらいのつもりでいたほうが、夫に「妻の給料がなくなると困る」と思ってもらえますし、それだけ対等な立場で話ができるのではないでしょうか。

もしお給料が2:1くらいの比率だったら、家事の分担を1:2にするなどして、家庭への貢献度のバランスをとり、対等な関係を保っていくことが大切なんじゃないかと思います。

 

参考:
病児保育のNPO法人 フローレンス(http://www.florence.or.jp/)
洗濯サービス スマイルウォッシュ(http://sentakudaikou.net/)
食材配達サービス oisix(https://www.oisix.com/)

 

(佐々木ののか+プレスラボ)