突撃!ワークライフバランスの現場訪問!この会社の事業所内保育所がスゴイ

2016年02月24日

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U29女子が今後、仕事と育児を両立したいと考えたとき、ハードルの一つとなるのが「子どもの預け先」ではないでしょうか。その解決策の一つとして挙げられるのが「事業所内保育所」です。しかし、事業所内保育所というとオフィスに併設されていて、園庭がないといった設備や、野外保育などのカリキュラムが充実していない場合も多く、預け先が見つからなかった場合の最終手段というイメージも。
化粧品メーカーの株式会社アルビオンでは、さまざまな工夫や改善の末、「預けたいと思える事業所内保育所」“Kuukids(クーキッズ)”を実現しています。今回、CSR(企業が社会的な責任を持って行う活動)事業に携わる小池愛美さんに、クーキッズ設立の経緯や、どのように育児支援に取り組んでいるのか、お話を伺いしました。

アルビオンについて

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アルビオン社は高級化粧品の製造・販売やスキンケア・メイクアップ・フレグランス・ヘアケアなど化粧品全般の開発、製造、全国販売を行う化粧品メーカー。女性の美容に関する商品を扱っているということもあり、社員は2,850人中2,350人と約8割が女性です。

待機児童の社会的課題に対応するため、事業所内保育所を設立

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「待機児童(入所申請を行っているが保育所に入れない子ども)」という言葉が世間で認知されるようになった2008年頃、アルビオン社の育児休業取得数は延べ人数で月平均50名足らずと少ない傾向にありました。理由は、ニーズに合う保育所が見つからないこと。復職を諦めざるを得なかった人の多くは、勤務時間が不規則で、土日出勤もある美容部員でした。

「子どもの預け先が見つからないために復職を諦めてしまうという課題に、会社として何らかの対策をうたないことには、女性社員のキャリア継続やモチベーション維持に支障がでるのではないかと危惧したことがクーキッズ設立のきっかけでした。

また2008年当時、CSRを意識する企業が増加、会社としても本社のある銀座に地域貢献したい気持ちがあったので、コンソーシアム型(他社も利用できる保育所の形態)の保育所を設置することで、待機児童対策の一助となればと考えました」(小池さん)

目指したのは「仕方なく預ける」のではなく、「ここに預けたい」と思える保育所

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クーキッズを開園するにあたり、小池さんは事前に社内アンケートを実施します。そして、「土日もフルタイムで働きたい」という美容部員たちの要望が多かったことから、土日祝日を問わず8時〜21時まで開園することに。また、決まった時間に登園する「一斉登園時間」を設けないことで、遅番などのシフトに合わせて子どもを預けられる柔軟な体制を整えました。

「保育所の多くは、19時や19時半に閉まってしまうのが一般的ですし、日祝日はお休みのところも多いです。百貨店などに勤務する社員の要望に応えられなければ、アルビオンで事業所内保育所をつくる意味がないんじゃないかと考えました」(小池さん)

アルビオン社では、設立当初から目指している保育所の形があるのだそう。それは、「保育所が見つからないために仕方なく預ける場所」ではなく、「預けたいと思う場所」にすること。保育所室内のデザインといったハード面だけでなく、現在も年に2回アンケートを実施し、より利用しやすくなるようにソフト面の改善も重ねています。
「アンケートを実施したとき、美容部員から『自分のシフトが流動的なため、子どもを習い事に通わせられない』という意見が多数ありました。その声に応え、週に1回音感教育の『リトミック』やバイリンガル講師による『英語教室』をはじめました。また母乳で育てている人からの希望で、授乳室も設置しました」(小池さん)

「英語教育」といった特別なプログラムは別途料金が発生する場合も多いそうですが、アルビオン社では無料で実施したこともあり、子どもを預けている社員からは喜びの声が多くあがったそうです。

運営してから7年が経過する現在は、育児休業取得者数は導入当時の3倍となる約130名に増加。復職率においては開園以降100%を達成した月もあり、現在も95%超を継続しています(2015年11月現在)。
またクーキッズを通じてアルビオン社の待機児童問題への取り組みや、地域社会への貢献といったビジョンに賛同し、アルビオン社への応募を決意したという声が届いているなど、人事採用の場面でも反響が出ているそうです。

子どもたちとの交流会や復帰サポートセミナーも実施

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アルビオン社では本社社員とクーキッズの子どもたちが交流する機会を年に3〜4回設けており、ハロウィンにはパレードを行い、本社を訪問してダンスなどを披露しています。

「クーキッズの取組みを社内に浸透・定着させること、結婚や出産を控えている女性社員にクーキッズをPRすることを目的としていますが、最近は男性社員の反響も多く見られるようになりましたね。先日も、男性社員が入園の申し込みをしてくれました。奥様の負担を軽減させるためにパパが送り迎えをするそうです」(小池さん)

その他にも育児支援として、育休取得者や復職者を対象に、出産後の働き方について具体的なイメージをつかんでもらい、不安を取り除くことを目的としたセミナーを年1回実施しています。
「セミナーでは『復職への心構え』や『会社の支援制度』、『国や自治体制度』についての講義や、復職後どのようにキャリアを積んで、どういったライフスタイルで働いていきたいのかについてのグループディスカッションなどを行っています。講師は育児中の先輩社員。経験者の生の声を聞ける場を設けることで、保育園選びや勤務時間、子育てに関する地域の制度など、育休取得者や復職者が仕事と育児を両立するための選択肢を増やしていければと考えています。

実際に参加した社員からは、『先輩ママたちと話ができて、復職や育児との両立に対する不安が軽減された』、『制度などが詳しく知れてよかった』という声があがっています。たとえ子どもがいたとしてもキャリアアップを諦めなくてもいいように、育児と仕事を調和させる何かしらの手がかりになれば嬉しいですね」(小池さん)

まとめ

事業所内保育所を設置する企業は増えてきたと言われているものの、夜間保育や休日保育など、流動的なシフトに柔軟に対応し、社員が仕事と育児を両立できるようサポートを行う「クーキッズ」のような保育所は少ないのではないでしょうか。また、サポート面だけではなく、親として「子どもにとって良い環境で育てたい」という気持ちにも応えてくれる、こんな保育所が増えれば、今後、結婚や出産を控えているU29女子も、育児と仕事のどちらも諦めることなく、安心して働き続けられそうですね。