U29(ユニーク) 女子プロジェクト

“高レジリエンス女子”とは?ストレスをパワーに変える行動心理学

今、時代は、不利な状況に直面しても、前向きに活動し続けることができる、レジリエンス(逆境力)の高い女性を求めています。また、ストレスにはプラスの面もあることがわかってきました。ストレスを感じても、ちょっとした工夫で、プラス面のみを発揮させ、パワーに変えることができます。

 

晴香葉子(はるかようこ)
作家/心理学者/心理コンサルタント。東京都出身。文学修士。早稲田大学オープンカレッジ心理学講座講師。日心連「心理学検定」1級(偏差値73取得)。テレビ、ラジオ、雑誌など、メディアでの心理解説実績多数。心理学・コミュニケーション学について、様々な角度から情報を提供している。著書多数。海外でも4冊出版。『現代日本執筆者大事典第5期』に現代日本を代表する執筆者として紹介。現在は、大学院博士課程に在籍し、研究を進めるとともに、執筆・講演・心理監修などの活動を行っている。テレビ朝日『ニュースEX・auヘッドライン』にて悩み相談記事連載中。

 

 

今、時代は、レジリエンスの高い女性を求めている

近年、様々な業種で、女性の活躍が目立ちます。打ち合わせをリードするのが女性である場面も増えました。管理職や人事の方とお会いする機会も多いので、女性躍進の理由について聞くと、以下のような声を多数耳にします。

・簡単に辞めない
・落ち込んでも回復が早い
・真面目で根気がある
・叱ってもキレたりせず、成長してくれる

かつて企業において、女性の資質として重宝された“細やかさ”“華やかさ”というキーワードではなく、挙げられるのは、“打たれ強さ”“回復力”“継続力” といったもの。

今時代は、不利な状況に直面しても、自発的に回復し、前向きに活動し続けることができる、レジリエンス(逆境力)の高い女性を求めています。

 

重要でありながら不足している能力、「ストレスコントロール力」

誰しも、できれば良い人間関係の中で仕事に取り組みたいものですが、チームで利益を追求すべき企業は、そのメンバーに「熱意・情熱」「行動力・実行力」「チームワーク力」を求めるようになってきました。
一方、 “若手社員に重要でありながら不足している能力”として半数近くの企業が挙げているのが、「ストレスコントロール力」です。

その理由として、「入社3年目までの離職率の高さ」や、近年上がりつつある精神疾患の労災請求件数などがあると考えられます。

 

ストレスは、実は、レジリエンスを高めるのに効果大

ストレスと聞くと、誰でもネガティブなイメージを抱きがちではないでしょうか。“できる限り回避すべきもの”という印象が根強いですが、最近になって、ストレス反応のメリットに光が当てられるようになりました。例えば、以下の3つのようなメリットが指摘されています。

・絆反応
ストレスにさらされることで、勇気がわき、人とのつながりを求める気持ちが強まる。
⇒組織内の団結力を強め、お互いを思いやり、助け合う勇敢さが誘発される。
⇒短期決戦のプロジェクトなどで、大きなメリットが期待できる。打ち上げの場では「今まで飲んだビールで一番美味しい!」「またこのメンバーで仕事がしたい!」という言葉が飛び交うことになる。

・学習効果
ストレスにさらされることで、チャレンジ精神がわき、学ぼうとする意欲が高まる。
⇒緊張感が、物事に向き合う姿勢を強化し、経験からの学びを進んで活かそうと考える。
⇒面接やオーディション、営業トークなどで大きなメリットに。経験すれば経験するほど、力をつけていくことができる。

・火事場の馬鹿力効果
ストレスにさらされることで、驚異的な身体能力が発揮される。
⇒五感が研ぎ澄まされ、身体全体のエネルギーを必要なことだけに集中させる。
⇒突発的な問題の解決、命運を分けるプレゼンテーションなどの場面で大きなメリットに。無我夢中なのに的確な行動がとれるので、驚嘆される。

 

ストレスをパワーに変えるために、思い込みを外す

アメリカで行われた調査では、強度なストレスがある場合、死亡リスクが高まることがわかりました。注目すべきはその内訳で、リスクが高まったのは、「ストレスは健康に悪い」と思い込んでいた人だけであった、ということです。同じような強度なストレスにさらされていた参加者でも、「ストレスは健康に悪い」と思い込んでいなかった人たちには、リスクの上昇は見られなかったというのです。

ストレス反応の良い面を活用していくために、まず必要なのは、「ストレスは身体に良い面もある」と考えることです。妊娠中にはある程度ストレスがあったほうが、胎児の脳の発達が優れているという研究結果も発表されています。

 

レジリエンスを高める簡単な行動心理学

働いていれば、ストレスゼロ、とはなかなかいかないもの。仕事や日常で、ストレスに遭遇したら、まずは、「良い面もある」と考えること。そして、以下のような簡単な方法を試してみてください。

・緊張しそうなときは、柔らかいタオルを
ふわふわとした柔らかいタオルを握っていると、目の前にあることの困難さが低減する。
⇒苦手な人に意見するときなど、心臓の鼓動が速まるのを感じたら、柔らかいタオルハンカチなどを握ってみる。心が穏やかになり、困難だと思う程度が弱まり、ストレスをチャレンジ精神に変えるのが容易になる。

・初対面が苦手な人は、あたたかい飲み物を手に
あたたかい飲み物を手にしていると、相手にあたたかな感情を抱きやすくなる。
⇒キーパーソンとの初対面など、良好な人間関係を築きたいのに、精神的に負担を感じたときは、あたたかい飲み物を手にして話してみる。手から伝わる温度が心のあたたかさとなり、一緒にいる相手に好意的な感情を抱きやすくなり、ストレスを絆反応へ展開させやすくなる。

・自信を失いそうなときこそ、良い姿勢で
良い姿勢をとると、体内物質が変化し、やる気がわいてくる。
⇒重要なプレゼンテーションや会議での報告などの場面で、自信を失いかけ、手が震えてきたら、意識して良い姿勢をとる。体内物質が変化し、やる気がわき、ストレス反応をエネルギー集約の効果へ変えることができる。

心と身体、そして行動はつながっています。ちょっとした行動で、記憶内容や心の状態が変わることがあり、このような現象は身体化認知と呼ばれています。
心理学的な知識を日常生活に気軽に応用すれば、ストレスコントロール力を高めることができます。そしてそれは、仕事を通して成長していくことを楽しむための鍵であり、時代が求めるレジリエンスの高いビジネスパーソン像への近道でもあります。

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