U29(ユニーク) 女子プロジェクト

頑張り過ぎてパンクする前に……自分でできるメンタルヘルス対策

アラサー世代になると職場でも頼られる存在に。重要な仕事を任されたり、リーダーやマネージャーとして指導的な立場になったり、それゆえに上司と部下との板挟みになることもあるでしょう。

そんな日々のストレスで、本当は心が疲れているのに、「たいしたことはない」と頑張り過ぎたり、忙しさに追われて放置してしまいがち。ある日突然、パンクしてしまう……なんてことがないよう、自分でできるメンタルヘルス対策を、産業医の石井りな先生にうかがいました。

 

まずは、メンタルの疲れを自覚すること

メンタルヘルス対策として、職場でストレスチェックや産業医との面談を実施しているという人も多いのではないでしょうか。しかし、ストレスチェックを受けた人のうち、実際に医師の面接指導を受けている人は意外と少なく、厚生労働省の調べではたったの0.6%にすぎません。

仕事の悩みやストレスは、積もり積もると生理不順や睡眠障害など、体の不調としても表れて、仕事どころか日常生活にも影響を及ぼしかねません。そうならないために大切なのは、「メンタルの疲れを自覚すること」です。以前と比べて怒りっぽくなった、よく眠れない、だるくて気力がわかない……といった症状がみられたら、疲労やストレスがたまっているのかもしれません。自分では気づいていないこともあるので、周囲からの「疲れているね」という言葉にも耳を傾けて、まずは早めに、信頼できる人や職場の産業医に相談してみましょう。

面談の事実や相談内容を会社に知られたくないと、産業医への相談をためらう人もいるかもしれませんが、守秘義務があるのでその心配はいりません。産業医は、働いている人の悩みを聞いて、セルフケアのアドバイスをしたり、治療が必要かどうかを判断したりするのが仕事で、治療そのものをすることはありません。人事課に職場環境の改善や異動を提案するケースもありますが、それはあくまでご本人に相談したうえで行います。
 

自分の見方・考え方を変えて、ストレス要因を減らす

アラサー世代によくある相談内容は、出産とキャリアなど人生の選択の悩み、無理がきかなくなったなどの体力・気力の悩みがありますが、最も多いのはやはり人間関係の悩みです。

もし、職場で苦手な相手とうまく接している人がいたら、そのコツを聞いたり、相手の別の側面を見るようにしてみましょう。それでもやっぱり苦手だと感じるのなら、仕事だけの付き合いと割り切るなど、相手に対する自分の見方を変えることで悩みも軽減するのではないでしょうか。家族など近しい人間関係に比べて、仕事での人間関係は一定の距離が保てるので、比較的対処しやすいものと思われます。

人間関係に限らず、いろいろな問題があって、どうしても現在の職場ではやっていけないと思ったときは、人事課や産業医へ相談するのも一つの方法です。しかし、その際思いつくままに不満ばかりを訴えてしまうと、あなた自身がトラブルに対処できない人とみなされてしまう恐れがあります。上司や人事課への相談は、あくまでも改善を提案するというスタンスで臨むと前向きな話し合いができます。

「人間関係を変えるのはムリ……」とあきらめずに、同じ境遇にいる人がどう対処しているかなどを参考にして、置かれた状況下で自分の考え方を見直してみることから始めましょう。確かに、相手を変えるのは難しいことですが、「自分が変わるかどうか」はあなた次第。自分の未来は、自身の考えや行動、選択によって、これからいくらでも変えていけます。実は「人間関係の悩み」こそ、解決しやすい問題なのです。
 

心の健康のためには、自分自身の「心の見える化」を

職場でストレスチェックを実施していない場合は、厚生労働省のウェブサイト(※)で自身のストレスチェックを行うことができます。月1回ぐらいのペースで「心の見える化」をしてみてもいいでしょう。

※厚生労働省:5分でできる職場のストレスチェック http://kokoro.mhlw.go.jp/check/

目の前の仕事に追われて、セルフチェックをする余裕すらないという人は、すでに高ストレス状態にあるのかも。次のような自覚症状があったら注意信号です。

忘れっぽくなった
仕事の効率が落ちた
家事が手につかない
片付けができない

特にストレスのバロメーターになるのが、身の回りの散らかり具合です。自宅や職場のデスクが散らかっていると、仕事や家事の効率が落ち、さらにストレスをため込む悪循環に陥ります。思い切って半日休暇をとって、片付けを断行してみると心もスッキリするのではないでしょうか。

また、ストレスをため込まないためには、食事、運動、睡眠も大切です。仕事が忙しくて食事すらとれないという状態にならないよう、最初にこれらの時間を確保したタイムスケジュールで仕事をすると、おのずと効率もアップして、心の健康にもつながります。
 

自分の心身の状態と向き合うことで、早期にストレスの蓄積度をチェック。いつもと違う自分に気づいたら、信頼できる人や産業医に相談を。

女性に多い人間関係の悩みは、相手に対する見方や自分の考え方を柔軟にすることで、やわらげることができるかもしれません。職場に不満があるときは、まず与えられた環境でどうしたらよくなるかを考えてみましょう。

食事、運動、睡眠は、心の健康にも大切なこと。忙しさに流されないように、これらの時間を先に固定してスケジュール管理をするといいでしょう。

 

記事監修:石井りな
精神科専門医、産業医、労働衛生コンサルタント、作業環境測定士。フェミナス産業医事務所、(株)プロヘルス代表。精神科産業医の立場から企業のヘルスケアを支援したいと思い、女性医師を中心としたフェミナス産業医事務所を設立。現在、多くの企業にて労働者のヘルスケアを支えている。

※この記事は2017年11月時点での情報です。

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