U29(ユニーク) 女子プロジェクト

なんだかモヤモヤ・イライラする! そんな人はまず「歩いて」みませんか?

美容や健康、ダイエット目的で「ウォーキング」をしている人は多いと思います。「時間がない」「つい億劫で……」と、習慣づけるのもなかなか大変ですよね。でも、歩くことは身体にいいだけでなく、脳や心にも大きな影響を与えるって知っていましたか?

歩くことは、ネガティブ思考をポジティブに、気持ちを明るく前向きにする効果があると、ウォーキングを推奨している医師の長尾和宏先生に、詳しく教えていただきました。

 

「歩く」ことで脳が活性化、思考がクリアに

「歩く」=「足」の運動とイメージするかもしれませんが、実は歩くことは脳や心の機能回復にも大きなメリットがあります。手足は脳の指令で動き、手足が動けば脳が刺激されます。つまり、手足と脳は直結して動いているということ。このため、歩くことは、脳を活性化することにつながるのです。デスクにずっとかじりついているよりも思考がクリアになって、散歩中などに素晴らしいアイディアが浮かんだりひらめいたりするのはこのためです。

パソコン業務などデスクワークが多い昨今、「疲れて身体がだるい」「ストレスでイライラする」といった不調の多くは、脳の疲労からきています。ちょっとしたことでクヨクヨ悩んだり、なんとなく不安でモヤモヤしたり……。思考がネガティブに傾きがちな人は、実は運動不足によって脳の働きが停滞気味になっているのかもしれません。そんな人にとって、「歩くこと」は前向きになれる最高の解決方法なのです。
 

前向き&幸せになるホルモンも分泌される

また、歩くと脳内ではさまざまなホルモンが分泌されます。その代表的なものが「幸せホルモン」と呼ばれる「セロトニン」です。セロトニンが増えると気持ちが落ち着いて前向きになり、表情も明るく生き生きしてきます。逆にセロトニンが不足すると、気分が落ち込みうつになりやすいこともわかっています。

さらにセロトニンのほかにも、人と触れあうことで優しい気持ちになる「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。つまり、一人で歩くのはもちろん、家族や友人、恋人と一緒に歩けば、オキシトシンが分泌されて、さらに「気持ちも明るく前向きに、幸せな気分になる」ということです。
 

認知症やうつ病の予防など、ほかにもいいことがいっぱい!

記憶の中枢となっているのが、「海馬」という脳の器官。認知症は、この海馬の機能が損なわれることで起こります。加齢とともに脳の神経細胞は減少していきますが、最近の脳科学の研究で、歩くと海馬の神経細胞を調整する神経栄養因子が増えて、海馬が再生していくことがわかりました。歩くことで認知機能が高まることが証明されているのです。

そのほか、歩くことは「全身運動」になるので、血流がよくなり、筋力がついて、骨密度も上がります。昼間に歩けば紫外線を浴びることでビタミンDが生成され、カルシウムの吸収率を高めます。その結果、便秘や肥満、さまざまな生活習慣病や、加齢とともに起こる骨粗しょう症などの改善・予防につながります。さらに、不眠やうつといったメンタル面でのトラブルにも効果的です。歩くことは、肉体面・精神面ともによい影響がたくさんあるのです。
 

時間や距離を気にせず、楽しんで歩くことが大事

「歩きましょう」というと、よく「どれくらいの距離を歩けばいいんですか?」「何時間歩けばいいんですか?」と質問されますが、皆さん、時間や歩数にとらわれすぎです。通勤途中やウィンドウショッピングをしながらなど、空いた時間に楽しみながら、自分のペースで歩けばよいと思います。

街の中には平坦な道も坂道もあるし、階段の上り下りもできて、まるで無料のフィットネスクラブのようなもの。速足で歩いたりゆっくり歩いたり、歩幅をいろいろ変えてみるなどして、“歩いているときの感覚”を意識してみると、より脳が刺激されます。自分が楽しい! と思える歩き方を工夫してみてください。

歩くときの姿勢は、背筋を伸ばして腕を振るのがポイント。肘を後ろに引くことで腰がひねられ、上半身もしっかり動きます。また、腰から押し出すように進んで歩幅を広くし、着地はかかとから。足に負担のかからない靴で、美しい姿勢を意識しましょう。
 

歩くことは身体のみならず、脳や心にも働きかける、手軽で素晴らしい健康法です。さまざまな不調が改善し、将来の健康もサポートしてくれます。

とくに「最近、気分が落ち込み気味だなぁ」という人は、ぜひ歩く時間を日々の生活に取り入れてみてください。思考がクリアになって、気持ちが前向きに、幸せな気持ちになれること間違いなしです。

 

記事監修:長尾和宏
長尾クリニック院長。医療法人社団裕和会理事長。全国在宅療養支援診療所連絡会理事。日本ホスピス在宅ケア研究会理事。関西国際大学客員教授。東京医科大学卒業後、大阪大学病院内科などに勤務。阪神大震災をきっかけに、1995年、身近な地域のかかりつけ医を目指して兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。『歩き方で人生が変わる。幸せになる10の歩き方』(山と溪谷社)、『痛くない死に方』(ブックマン社)など著書多数。

※この記事は2017年10月時点での情報です。

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